”無きにしも非ず”は”なきにしもあらず”と読む。 もしかしたらそう読まないことも無きにしも非ずでしょうが、ここでは”なきにしもあらず”と読むことにします。
さて、「あらず」は「ラ変:ある」の未然形+「打消の助動詞:ず」の終止形である。「あらず」を漢字にする時、
- 在らず
- 有らず
- 非ず
の3つが考えられる。そこで、この3つの漢字について逐一考える。
まず、「在る」は「ある」と読むので、「在らず」は「あらず」と読むことに納得が行く。 同様に、「有る」は「ある」と読むので、「有らず」は「あらず」と読むことに納得が行く。
しかし、「非る」を「ある」とは読まないのに、「非ず」を「あらず」と読むのはなぜなのでしょう?
と思い至り辞書やら辞典を引いてみたものの、結論から言えば何故「非ず」を「あらず」と読むようになったのか合点出来なかった。
以下は調べた結果である。
あら-ず【非ず】 (感動詞的に)いや、そうではない。否。 枕 八「何ぞ…と問はせ給ふ。ー、車の入り侍らざりつることいひ侍りつる」
from:新村出他(1995)『広辞苑』第6版、岩波書店、p.93
あら-ず (句)|不有|非| 〔ありノ未然形ニ、打消ノ助動詞ノ、ずノ添ハリタルモノ、ず、ぬト活用ス〉然ハ無シ。サウデナイ。連体形ニテ、あらぬ。
from :大槻文彦 他(S.31)『新編大言海』冨山房、p.100
あら-ず【非ず】 (連語)《「あり」の未然形に打ち消しの助動詞「ず」の付いたもの》そうではない。
from :梅棹忠夫 他(1989)『日本語大辞典』第ニ版、講談社 p.73
(※簡略化して示す)【非】 ①そむく。②いつはり。③わるい。④よこしま。⑤あやまち。⑥あらず。ず。⑦ない。⑧くだる。⑨かくれる。⑩とがめる。⑪せめる。⑫つみする。⑬そしる。⑭うらむ。⑮いなや。(中略) 〔説文通訓定聲〕非、違也、从飛下翅、取其相背也、指事。